7月26日、菅義偉首相が広島「黒い雨」訴訟の原告に対し被爆者健康手帳の交付を命じた広島高裁の判決に上告しないことを表明したことを受け、声明を2021年7月27日に発出しました。
2021年7月27日
長崎県保険医協会
会長 本田孝也
「黒い雨」訴訟の歴史的快挙を祝し、被爆地域の抜本的見直しに期待する
7月26日、菅義偉首相は広島「黒い雨」訴訟の原告84人に対し被爆者健康手帳の交付を命じた広島高裁の判決に上告しないことを表明した。高裁判決が確定した瞬間であり、まさに歴史的快挙といえる。
「黒い雨」訴訟の被告は広島県と広島市である。広島高裁の判決に、国は「科学的な知見に基づいていない」として広島県、広島市に対して上告するように要望した。これに対し広島県、広島市は上告しない意向を示し、被告が上告しないというのに、国が上告を要望するという異例の事態となった。
広島高裁判決後、全国から「黒い雨」判決を支持する声が高まり、上告断念を求めて始まったネット署名は短期間にもかかわらず26日朝までに8400人余りに達した。
国を上告断念に追い込んだのは、住民の切なる声であり、国民の良識である。また、最後まで国に屈しなかった湯﨑英彦広島県知事、松井一實広島市長に敬意を表したい。
本当に長い道のりだったと思う。この日を待つことなく14人の原告が亡くなっている。原告だけでなく、黒い雨に遭い被爆者認定を求めながら叶わず、多くの住民が道半ばで亡くなった。残された住民にも高齢化が進んでいる。
事情は長崎でも同じである。被爆体験者訴訟の最高裁判決で原告全員の敗訴が確定し、一度は消えかかった被爆地域拡大運動の火がもう一度灯った。
広島高裁は判決で「黒い雨」地域住民の被爆者としての要件を「放射能による健康被害が否定できないことを立証すれば足りる」とした。これは長崎の被爆未指定地域に当てはまる。長崎では黒い雨は一部にしか降らなかったが、爆心地から12Km圏内全域に放射性降下物が降下したことがマンハッタン調査団の調査結果からも証明されている。広島高裁の被爆者の要件に照らせば、全員が被爆者に該当することは明白である。
菅首相は会見の中で「黒い雨」訴訟の原告と同様の被害者に対しても「救済策を検討していきたい」と述べた。被爆未指定地域住民全員の救済、すなわち被爆地域の抜本的見直しが広島そして長崎で一日も早く実現することに期待したい。
以上