協会では福島第一原発事故から10年目の節目にあたり、会長声明を21年3月1日に発出しました。
長崎県保険医協会
会長 本田 孝也
福島第一原発事故から10年にあたり、同事故を風化させず、原子力に依存しない社会の実現を求める声明
まもなく福島第一原発事故から10年を迎える。避難区域は順次解除され、事故の記憶は人々の脳裏から消えようとしている。
しかし、2021年1月13日時点で28,959人が福島県外への避難を余儀なくされており、航空機モニタリングによれば、福島第一原発から80km圏内の地表面から1m高さの空間線量率は10年間で8割減少したに過ぎない。帰還した住民は医療法が定める放射線管理区域を超える汚染地域で生活している。「被曝線量が少ないから健康への影響はない」はまやかしである。
増え続ける汚染水の問題も解決していない。海洋投棄は「薄めれば大丈夫」だからではなく、それ以外に方法がないからである。汚染水に含まれるトリチウムの内部被曝による人体影響については結論がでていない。影響がないとはいえないのである。
福島第一原発事故があの規模で止まったのはいくつかの幸運な偶然がかさなった結果にすぎない。もしも、炉心融解で溶けた核燃料が格納容器の底を破り、地下水脈に達したら、あるいは、水素爆発を起こした4号機のプールの水が空であったら、チェルノブイリ原発事故をはるかに超える大惨事となり、日本全体が壊滅していてもおかしくなかったのである。
広島、長崎は原爆投下から75年を過ぎてなお住民に深い傷跡を残している。福島第一原発事故を風化させてはならない。
原子力発電がなくても、将来的には自然エネルギーによる発電で我国の電力需要をまかなうことは可能である。
1月には核兵器禁止条約が発効した。核抑止力に頼らなくても世界平和を実現することは可能である。
当会は国民の生命と健康を守る医師、歯科医師の団体として、福島第一原発事故から10年にあたり、あらためて原子力に依存しない社会の実現を求めるものである。
以上