13世帯約60人が暮らす、川棚町川原地区は、明け渡し期限の11月18日までに立ち退かない場合、県は強制排除する「行政代執行」が可能となります。
協会は、県民医療の充実・向上を目指す医師・歯科医師の立場から、常任理事会声明を発出し、10月28日に県及び佐世保市、川棚町、県選出国会議員に提出・送付しました。
なお、本件は10月29日付長崎新聞で報道されました。
長崎県は石木ダム建設予定地の行政代執行を急がず、住民との対話を行うべきである
13世帯約60人が暮らす、長崎県東彼杵町川棚町岩屋郷川原地区の土地は、明け渡し期限の11月18日までに住民が立ち退かない場合に、県は強制的に排除する「行政代執行」が可能となります。
佐世保市の人口減少や生活スタイルの変化から水不足への懸念は縮小し、ダムの最初の目的であった「佐世保市民のための水道水確保」の意義は薄れている上に、後付けの目的と思われる川棚川の治水についても支流にダムを造る効果が疑問視されています。
2018年には13世帯を巡るドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」が上映され、その名が全国的に知れ亘りました。さらに2019年4月の川棚町議選では反対地権者がトップ当選しました。このように半世紀に亘る“行政VS住民”の構図には明らかに変化が生じています。
さらに言えば、県内の医師・歯科医師1,930人が加入し、地域住民の健康・命を守ることを目的に活動する長崎県保険医協会は地域住民の健康状態の悪化を懸念します。市民団体等の報告によれば、住民の精神的ストレスは大きく、心身の健康を害する住民が散見されています。
国民の健康・福祉の向上に努めることは行政の責務です。中村知事はすでに「行政代執行」に言及していますが、住民を強制排除する緊急性はありません。社会情勢の変化に加え、地域住民の健康状態を鑑みれば「行政代執行」を強行すべきではありません。
さらに「公共の利益のために」という大義名分のもと、異論を有する一部の住民を犠牲にするというこの国の行政が永年司ってきた手法と決別すること。そのことが、行政に対する県民・国民の信頼を根本的に取り戻すことにつながると認識すべきです。決断の如何によっては中村知事は後世に名を残すことになるでしょう。
知事は拙速に過ぎることなく、世論に耳を傾けながら住民との対話を行うことを求めます。
2019年10月15日 第3回常任理事会
長崎県保険医協会
会長 本田孝也