協会は国による「長崎の黒い雨等に関する専門科会議」報告書に対する見解について下記のとおり抗議文を発出しました。
抗議声明
岸田 文雄 内閣総理大臣
加藤 勝信 厚生労働大臣
2023年1月18日
長崎県保険医協会
会長 本田 孝也
「長崎の黒い雨等に関する専門家会議」報告書に対する国の見解に抗議する
2023年1月16日、厚生労働省は長崎県が設置する「長崎の黒い雨等に関する専門家会議」において取りまとめられた報告書(長崎報告書)に対して見解を述べた。
見解は「過去の被爆体験者訴訟との整合性がない」「被爆地域以外での降雨があったとする客観的事実がない」ことより、長崎の被爆体験者において、広島と同様に、令和4年3月18日厚生労働省健康局長通知「「黒い雨」被爆者健康手帳交付請求訴訟の「原告」と同じような事情にあったと認められる者に係る取扱いについて」(以下「令和4年局長通知」という。)の対象とすることはできないと結論した。
見解は論理をすり換え、非科学的かつ合理性を欠いた詭弁であり、およそ納得できるものではない。
長崎報告書は長崎が被爆者認定の対象外とされた2つの理由について検証することを目的とした。そして、理由その1【過去の被爆体験者訴訟との整合性について】については、「黒い雨訴訟を踏まえた審査の認定基準において、長崎で黒い雨に遭った者を被爆者健康手帳交付の対象とすることは、過去の被爆体験者訴訟判決と何ら矛盾するものではない。」と結論し、理由その2【被爆地域以外での降雨があったとする客観的事実について】については、「長崎において、被爆地域である西山地区以外で原爆投下後間もなく降雨があったことに関し、「平成11年度原子爆弾被爆未指定地域証言調査証言集」は、客観的な記録であると言える。」と結論した。
これに対して厚労省の見解は、検討の対象となった2つの理由を繰り返したのみで、本末転倒であり、反論にすらなっていない。
そもそも「黒い雨」とは黒い色の雨ではなく、原爆の放射性物質を含んだ雨のことである。広島では放射性降下物の痕跡が検出されなかったから、広島高裁は、黒い雨に遭ったことから放射性降下物による内部被曝を受けたことが否定できないことをもって被爆者と認定したのである。
これに対して長崎では米国マンハッタン調査団の調査により、被爆未指定地域の全域において放射線量が記録されている。これこそ放射性降下物が降ったことの動かぬ客観的な証拠である。
国は潔く専門家会議の報告書を受け入れ、被爆体験者を被爆者と認定するための具体的方策を長崎県、長崎市と早急に検討されんことを望むものである。
以上